研究概要 |
主任研究者らが抗精子抗体の産生抑制因子として見いだしたイムノグロプリン結合因子(IgBF,immunoglobulin binding factor)は、通常不活性型であり、還元処理およびT細胞由来のプロテアゾーム、さらにはペプチド分子の立体構造を決定する分子シャペロンの一つprotein disulfide isomerase(PDI)により活性部位が発現するという活性化機構の存在を明らかにしている。本年度は、女性内性器におけるPDIの局在を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、1)ヒト子宮頚管、内膜、卵管および卵巣、および絨毛、卵膜ならびに脱落膜から抽出したtotal RNA 5μgをologo d(T)18primerを用いて逆転写反応を行い,ヒト胎盤DNAのcDNAをもとに、全アミノ酸配列をコードする領域を含むcDNAフラグメントを増幅するように設計したprimerを用いてPCR反応を行った。PCR産物はアガロースゲル電気泳動後,ethidium bromideで染色し,トランスイルミネーターで確認した。その結果IgBF産生部位である子宮頸管を初め、検討した組織すべてにPDIcDNAのバンドを認めた。すなわちPDIは女性内性器に広く分布していることが明らかとなった。さらに、2)bovine liver由来のPDI0.5mgをcomplete Freund's adjuvantとともに2週毎8回免疫し、3羽の家兎から高抗体価の抗PDIポリクローナル抗体を得た。抗PDI抗体の抗体価を測定は、PDI100ng/wellをコートした96well microplateを用いたELISA法により行った。 現在、患者および家族の同意を得た上で、手術あるいは培検時に得た女性内性器組織に新鮮凍結標本ライブラリーおよび頸管粘液ライブラリーを作成しており、本年度の研究で得た抗体を用いたPDIの定量的検討を試みると共に、PDIおよびプロテアゾームの女性内性器における局在をより明らかにしたい。
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