研究概要 |
思春期発来過程で、性機能系が発育発達する段階での松果体臓器のmelatonin産生動態を特にgonadal-pineal feedback機構に注目し検討した。ラットにおいては生後6週齢で初回排卵が認められるが、melatonin産生能は生後から膣開口期の6週にむけ増量し、以後排卵周期の確立の過程で低下し、8週で安定する。一方、6週齢で卵巣を摘除した群では、排卵周期確立過程でのmelatoninの減少はみられず、逆に著明な増加が示された。さらに、卵巣摘除ラットに外因性にエストロゲンを負荷することで正常ラットと同一のmelatonin産生動態を再現することが可能であった。また、4週齢で卵巣摘除を行った遅発思春期モデルラットでは排卵周期の確立した時期に相当する8週齢でもmelatoninの減少はみられず、逆に4週齢よりエストロゲンを投与した早発思春期モデルラットでは6週齢で既に8週齢に相当するmelatoninレベルを示した。従ってこれら一連の検討成績から、排卵周期確立過程での松果体でのmelatonin産生能は卵巣より分泌されるエストロゲンにより強く調節されていることが明らかとなった。Melatoninの産生はN-acetyltransferase(NAT)とHydroxyindole-O-metyltransferase(HIOMT)がkey enzymeであるが、melatonin産生能は正常ラット、卵巣摘除ラット、卵巣摘除エストロゲン負荷ラット共にNAT活性と強く相関することから、エストロゲンの作用はNAT活性を規制する機序に基づくことが強く示唆された。 松果体中のmelatonin産生はノルエピネフリンにより調節され、cyclic AMPがセカンドメッセンジャーとしてNAT活性を規制する。そこで上記の実験モデルを用い、cyclic AMP酸性酵素であるadenylate cyclase活性とmelatonin,NAT活性、HIOMT活性との関連を検討すると、NAT活性とadenylate cyclase活性の間に強い相関のあることが明らかとなった。 今回の一連の研究から、性機能系の発達過程でのmelatonin産生能は、卵巣より分泌の増量がみられるエストロゲンがadenylate cyclase活性、NAT活性を調節することで強く影響していることが明らかとなった。またAntigonadal作用を有するmelatoninの産生低下が性機能系の発達に関与していることが示唆された。
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