動脈硬化抑制作用と子宮内膜作用との相関からみた卵巣性ステロイドの影響に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671693
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 野崎 雅裕 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60228319)
• 研究分担者: 江上 りか (緒方 りか) 九州大学, 医学部, 助手 (30243926)
• キーワード: estrogen / progesterone / atherosclerosis / endometrium

研究概要

卵巣性ステロイドことにエストロゲン(E)は、動脈硬化を抑制する物質として知られ、その作用機序には脂質代謝に対する影響及び血管機能に対する作用がある。今回の研究では、Eに加えて卵巣性ステロイドであるブロゲスチン(P)が動脈壁と子宮内膜に対してどの様な変化をもたらすかを検討した。生後約6ケ月の日本白兎をシャム手術を行ったコントロール(C)群、卵巣摘除術(OVX)群、卵巣摘除+E投与を行ったOVX+E(吉草酸エストラジオール5mg/body/2weeks)群、卵巣摘除+E+P投与を行ったOVX+E+1.0P(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン125mg/body/2weeks)群、OVX+E+0.3P群及びOVX+E+0.1P群とに分けて、それぞれ2週間毎の性ステロイド投与を行いながら、0.5%コレステロール食で飼育した。6ケ月後に安楽死させ鏡検用血管標本(H.E.染色他)の作製及び収縮実験を行った。標本は、長軸方向に垂直にスライスし放射状に設定した8方向の内中膜の厚さを測定し平均を求めた。血管の収縮実験は脳底動脈及び胸部大動脈でリング標本を作製し、等尺性収縮記録法を用いた。胸部大動脈の中腹の厚さはOVX群では非コレステロール食の約2.5倍の844±78μmに達し、OVX群>OVX+E+1.0P群>OVX+E+0.3P群>OVX+E+0.1P群>OVX+E群>C群の順であった。脳底動脈では、明らかな内中膜の肥厚は見られず、有意差は認めなかった。等尺性収縮記録法では、胸部大動脈では内皮依存性の弛緩反応の見られた標本数は、上記の順に少なかった。脳底動脈では内皮依存性の弛緩反応は全ての標本で認めたが、OVX群でC群あるいはOVX+E群より有意に減弱した。子宮内膜に関してはPによる有意差が認められず、濃度設定や検体数などが検討課題である。結論として、Eは動脈硬化のある血管の弛緩反応をも増強し、PはEが有する内中膜の肥厚抑制を減弱する。

研究成果

• [文献書誌] 野崎雅裕: "閉経による心血管系の変化及びその機序に関する研究"日本産科婦人科学会雑誌. 49・8. 552-562 (1997)
• [文献書誌] 野崎雅裕,中野仁雄: "更年期女性の高脂血症と動脈硬化"The Lipid. 8・5. 15-20 (1997)
• [文献書誌] 緒方りか,野崎雅裕,中野仁雄: "特集:ホルモン補充療法-治療スケジュール"産婦人科治療. 75・4. 411-414 (1997)
• [文献書誌] 澄井敬成,野崎雅裕,中野仁雄: "更年期のエストロゲン補充と血管系"ホルモンと臨床. 46・5. 417-422 (1998)
• [文献書誌] 緒方りか: "日本人女性の血管機能とHRT"日本更年期医学会雑誌. 7・1. 66-70 (1999)
• [文献書誌] M.Nozaki,R.Ogata,K.Koera,K.Hashimoto,H.Nakano.: "Changes in the coagulation factors and fibrinolytic components of postmenopausal women receiving continuous hormone replacement therapy."Climacteric. 2・2. 124-130 (1999)