研究概要 |
臨床研究としてエストロゲンの骨塩量に対する影響を検討した。[目的]我々は先に,卵摘後の骨塩量減少は最初の1年間で10.7%、2年目で5.7%と、卵摘後早期が急激であることを報告した.今回この卵摘後早期の骨塩量減少が、卵巣欠落障害の治療に汎用されている結合型エストロゲン(CEE)を用いたエストロゲン補充療法(ERT)で防止できるか否かを検討した.[方法]婦人科良性疾患のため閉経前に卵摘を受けた87例の婦人を卵摘からERT開始までの期間により3群(第1群:2年未満;31例,第2群:2年以上5年未満;29例,第3群:5年以上;27例)に分けて,0.625mg/日のCEEを連日投与し,DEXA法を用いたL2-L4の腰椎骨塩量,尿中デオキシピリジノリン(DPyr),血中インタクトオステオカルシン(hOC)を6ヶ月毎に3年間測定した.[成績]1群のERT前の骨塩量は0.982±0.056g/cm^2であり,2群(0.813±0.043g/cm^2)および3群(0.711±0.06g/cm^2)より有意に高値であった.1群では0.625mg/日のCEEによるERTは最初の1年の早期の骨塩量の減少を抑制できなかった.しかし2年目終了時には骨塩量はERT前の値に回復した.同量のCEEは2群,3群においては1年終了時に骨塩量を有意に増加させた.骨代謝マーカーのDPyr,hOCは全ての群でERT開始後6ヶ月で有意に減少し,その後は著明な変化を示さず,低値で安定した.[結論]骨塩量維持のために卵摘後早期にERTを開始することは重要であるが,0.625mg/日のCEE連続投与のみではERT開始後2年間は急性期の骨塩量低下を防止できなかった.ERTに用いるCEE量の安易な増量は乳房痛などの副作用のため必ずしも一般化できないため,この骨塩量の減少防止には他薬剤の併用等も考慮することが必要と思われる。 基礎研究としては現在は雌ラットを卵巣摘出後4週間経過した時点でエストロゲン投与群、ホルモン非投与群に分け、長管骨より細胞を得て、全細胞記録を試みているが、技術的に困難な点があり、培養などの方法を検討中である。
|