研究概要 |
全く未知の遺伝子としてわれわれが初めてクローニングしたpolo like kinase(PLK)[Hamanaka et al.Cell Growth & Differ.5:249-257,1994]はヒト胎盤cDNAライブラリーよりkinase特異的なprimerを使用してPCR(polymerase chain reaction)法によって拾い上げられてきた遺伝子で、ノーザン法では脳、肺、肝、腎など主要臓器に全くメッセンジャーRNA(mRNA)の発現を認めず、胎盤のみで発現が認められたユニークなkinaseである。この胎盤特異的遺伝子として初めて報告されたPLKが、具体的に妊娠のどの時期の、どの細胞に、どの程度の発現が認められるかを解析した。 ノーザン法により、ヒトでは妊娠初期、中期、末期と週数が進むにつれてPLKのシグナルが弱くなっていくのを確認した。さらに免疫組織化学的検討とIn situ hybrydizaton(ISH)法により解析したところ、妊娠初期の絨毛、脱落膜、子宮内膜線に強くPLKの蛋白、mRNAの発現が認められ、妊娠中期では絨毛のみに弱い発現が認められ、妊娠末期ではPLKの発現は認められなかった[Yoshimatsu et al.Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.,2000,in press]。 マウスでは更に細かい解析を目的とし、妊娠1日目から分娩までのすべての日数の標本を作製し、ノーザン法、ISH法、免疫組織化学的検討を行った。妊娠0〜3日目にすべての子宮内膜線と内膜間質にPLKの発現が認められたが、妊娠5日目以降は着床部のみの子宮内膜線に発現は限られ、子宮内膜間質は脱落膜化すると発現しなくなった。脱落膜に侵入したtrophoblastには強い発現が認められた。全期間を通して、卵巣間質には強く、妊娠黄体には一部に発現が認められた[Takai et al.Reprod.Fertil.Dev.11:31-35.1999]。 今後は、PLKの生物学的役割(機能)を明らかにするため、更に実験を進めていく予定である。
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