研究概要 |
[目的]加齢に伴って筋肉量は低下するが,閉経そのものが筋肉量を低下させるか否かは明確でない。そこで閉経の全身,身体各部位の筋肉量に及ぼす影響を検討した。[方法]右利きの有経婦人(N=173)と閉経婦人(N=123)を対象とした。年齢,閉経の有無,身長,体重,身体各部位(頭部,躯幹,左右上下肢)の筋肉量をDEXAで測定し,(1)両群で比較した。(2)全例で全身および身体各部位の筋肉量と各因子との相関を回帰分析で求めた。[成績](1)有経群で身長,躯幹筋肉量,左右下肢筋肉量および全身筋肉量が有意に高かったが体重,頭部筋肉量,左右上肢筋肉量に両群間で差を認めなかった。(2)単回帰分析で,頭部と左右上肢の筋肉量は身長と正の相関を示したが,閉経の有無とは相関しなかった。左右上肢は年齢とも相関を示さなかった。躯幹,左右下肢および全身筋肉量はいずれも年齢,閉経の有無と負の相関を示したが,身長とは正の相関を示した。(3)重回帰分析で、躯幹筋肉量は年齢や身長に非依存的に閉経の有無と負の相関を示した。全身筋肉量は年齢や身長に非依存的に閉経の有無と負の相関を示す傾向にあった。しかし,頭部,左右上肢,左右下肢の筋肉量は閉経の有無とは相関を示さなかった。[考察]閉経は加齢や身長には非依存的に躯幹筋肉量を低下させることが判明した。閉経による筋肉量の低下が測定部位により異なるという報告は初めてである。人間は日常的に手を動かし四肢使って起立,歩行する。これらの運動はその部位の筋肉量の維持に働くkとから、四肢では閉経に伴う筋肉量の減少を運動により相殺している可能性がある。一方,躯幹筋肉は四肢ほど使われているわけではないために閉経の影響をまともに受けやすいものと推察出来る。
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