研究概要 |
[目的]女性は加齢や閉経に伴い内分泌・代謝異常を伴いやすい上半身型(男性型)体脂肪分布へ移行する。これにエストロゲン低下が関与していることが示されている。一方,アンドロゲン(A)は筋肉量に影響し,筋肉量の多寡は体脂肪量にも影響を及ぼすことから,A動態が筋肉分布を介して体脂肪分布に影響を及ぼしている可能性がある。そこで閉経婦人のA環境や筋肉分布が体脂肪分布とどのように関連しているかを検討した。 [方法]閉経婦人20例(56.4±6.9歳)を対象にした。年齢,閉経後年数(YSM),身長,体重,BMIを調査した。DEXAで躯幹,下肢,全身の筋肉量,躯幹-下肢筋肉量比(筋肉分布),体脂肪量,体脂肪率,躯幹-下肢脂肪量比(体脂肪分布)を測定した。E1,E2,テストステロン(T),freeT,SHBG,T/SHBG,アンドロステンジオン(Δ^4A),DHEASを測定した。これらの因子間の相関を単変量,多変量解析で求めた。 [成績]躯幹-下肢脂肪量比はT/SHBG(r=0.70^<**)>,free T(0.45^*),T(0.40^*)と正の相関を,SHBG(-0.42^*)と負の相関を示した。これらの関係は年齢,身長,YSMを補正後も依然として有意であった^*。しかし,体脂肪量(r=-0.06^<**>)や体脂肪率(-0.19)はT/SHBGと何ら相関を示さなかった。躯幹-下肢筋肉量比はT(0.51^<**>),SHBG(0.44),freeT(0.39^*)と正の相関を示したが,躯幹-下肢脂肪量比(r=-0.07)とは相関を示さなかった。(^*P<0.05,^<**>P<0.01) [結論]高アンドロゲン環境は,一方では上半身型体脂肪分布と,一方では上半身型筋肉分布と関連する。しかし,筋肉分布の体脂肪分布に及ぼす影響は閉経婦人では弱いことが明らかとなった。
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