これまでの研究で、胎盤はHTLV-Iに感染するとアポトーシスをおこすことを示してきた。平成10年度は、胎盤絨毛細胞がHTLV-I感染リンパ球に対してアポトーシスを誘導する作用をもつか否かをみる実験を行った。 1. 妊娠末期の抗HTLV-I抗体陰性の妊婦より胎盤を採取し、酵素処理、Percoll比重遠心法によって胎盤絨毛単層細胞を得た。この胎盤絨毛単層細胞はトロホブラストの他に、マクロファージ、ファイブロブラスト、血管内皮細胞を含むものである。 2. 絨毛癌細胞cell lineであるBeWo細胞、fibroblast cell lineであるCCD 1059 SKの単層細胞を得た。 3. 得られた胎盤絨毛単層細胞、BeWo細胞の単層細胞、CCD 1059 SKの単層細胞を十分洗浄し、フラスコ付着細胞のみにした後に、HTLV-I感染リンパ球(MT-2細胞)をそれぞれの単層細胞に加え48時間培養し、浮遊細胞(MT-2細胞)を回収しスライドグラスに固定し、アポトーシスをTUNEL法で調べた。 結果 胎盤絨毛単層細胞と共培養したMT-2細胞では、BeWo細胞の単層細胞、CCD 1059 SKの単層細胞と共培養したものに比べ、明らかにアポトーシス陽性細胞が多かった。 以上のことより、胎盤絨毛細胞にはHTLV-I感染リンパ球(MT-2細胞)にアポトーシスを誘導する作用があることが示唆された。
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