研究概要 |
[目的]:子宮頚癌において、転移が疑われる組織のHPV DNAを前方視的に検索し、組織的転移との関連性、転移診断への有用性、について解析した。 [対象と方法]:頚癌Ib-IVb期113例(手術96例、再発/非手術17例)を対象とし、頚部原発巣擦過細胞、摘出腫大リンパ節割面擦過細胞、腫大リンパ節穿刺細胞、喀痰洗浄細胞、気管支鏡的採取組織細胞からDNAを抽出した。HPV L1 consensus primerを用いたPCRとSouthern BlotによりHPV DNAを検出し、また、形判定を行った。 [成績]:(1)手術96例の原発巣におけるHPV DNA陽性率は、扁平/腺扁平上皮癌84.4%(65/77例),腺癌56.2%(10/19例),未分化癌100%(1/1例)であった。(2)これらHPV陽性76例について検索した摘出腫大リンパ節におけるHPV陽性率は、7.2%(29/403例)であった。(3)これらHPV陽性リンパ節における組織的転移率は、79.3%(23/29個)であった。なお、HPV陰性で組織的転移陽性というリンパ節はなかった。(4)HPV陽性で組織的転移陰性リンパ節を持つ4例は転移陽性とみなして術後治療を行ったが、うち1例は再発死亡となった。(5)再発/非手術17例(いずれも原発巣のHPV DNA陽性)において、骨盤リンパ節1例、傍大動脈リンパ節7例、鎖骨上窩リンパ節5例、腋窩リンパ節1例からの穿刺細胞、咯痰2例からの洗浄細胞、気管支鏡的採取組織1例からの細胞についてHPVを検索し、100%の陽性率を得た。これらHPV陽性検体における組織的転移率は84.2%(16/19検体)であった。 [次年度への展開]:組織的転移が陰性であるにもかかわらずHPV DNA陽性である場合に、これを潜在性転移陽性として治療することの妥当性を検討する。HPV mRNAの検索を追加し、当該組織でHPVの複製が起こっていることを確認し、転移とみなすことの妥当性を追求する。
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