研究課題
多嚢胞性卵巣症候群は排卵障害のなかでその頻度が高く、排卵誘発に際して過剰に反応することにより卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠などの副作用を呈しやすく、一方排卵誘発に難渋する症例も経験し、その病態は未だ十分には解明されていない。我々は多嚢胞性卵巣症候群における視床下部下垂体副腎系の関与についての検討を、hCRHを用いて視床下部下垂体副腎系検査を行うことにより、3群に分類可能であることを解明した。1群は視床下部下垂体副腎系は正常であり、高アンドロゲン血症は卵巣型のことが多く、排卵誘発、それによる妊娠率ともに良好であり、2群はhCRHに対する下垂体のACTHの反応性の亢進により副腎型高アンドロゲン血症を高頻度に合併し、3群はCRHの視床下部での分泌亢進が見られ、クッシング様といえる病態であり、副腎型高アンドロゲン血症、肥満を高頻度に認めた。また、2群、3群は排卵誘発に抵抗する症例が多く、妊娠率も低いことが判明した。また、超音波断層法による卵巣の多嚢胞性卵巣パターンにはgeneral cystic pattern(GCP)とperirheral cystic pattern(PCP)が存在し、1群でPCPの頻度が、2、3群でGCPの頻度が高く、副腎機能が卵巣における多嚢胞性パターン関与している可能性が高いことが判明した。さらに、腹腔鏡におけるレーザーによる多孔術による排卵誘発効果はPCPで良好であった。多嚢胞性卵巣症候群ではLHの分泌が亢進し、高振幅のLHパルス状分泌が特徴とされるが、基礎実験としてCRHがこれに関与している可能性を検討する目的でGnRH cell(GT1-1/GT1-7)を用いたCRHの潅流実験を施行し、CRHがGnRH分泌を亢進したことより、CRHがこの特徴的なパルス状分泌に関与している可能性が示唆された。
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