本研究は、光学技術及び多電極皿法を用いた電気活動記録により、神経回路を形成するGnRHニューロン活動の周期形成とその同期化のメカニズムを探究することを目的とする。平成9年度は以下の結果を得た。まず第一に、培養GnRHニューロンに電位感受性蛍光色素を適用し、光信号に変換された神経細胞の電気活動を計測することにより、神経回路を形成しているGnRHニューロン群全体の神経活動を観察した。光学的計測法は、次に行なう多電極皿法による記録に比べ、より広い視野で、視野内の細胞活動をもれなく記録することができるので、多電極皿記録の指南的研究としても有用である。実験には不死化GnRHニューロンを用いた。不死化ニューロンを用いることにより、単一種ニューロンで形成されたネットワークという単純な系での初期的解析ができる。個々のGnRHニューロンは互いに結合した細胞集団内で同期して自発性活動を呈していた。一個の細胞に刺激を与えると細胞間連絡を介して興奮が伝わった。この興奮の伝わりは、Na^+チャネル阻害剤、Ca^<2+>チャネル阻害剤で阻止され、ある種のK^+チャネル阻害剤(4-アミノピリジン)で増強された。また、cAMPを合成するアデニルシクラーゼ阻害剤や蛋白キナーゼA阻害剤によっても興奮の拡がりは縮小された。次に、視床下部ニューロンの多電極皿法による記録を試みた。GnRHニューロンを含む視床下部ニューロンを培養したところ、細胞は軸索を伸ばして他の隣接ニューロンと結合し、形態的に神経回路を形成した。多電極皿記録により、この視床下部ニューロンから長時間の記録(1-2時間)が得られた。隣接したニューロン同士で同期して発火する細胞を見いだした。同期発火するニューロン同士はシナプス様に結合していた。現在、周期的に発火するニューロン群を検索中であり、今後、免疫組織化学的に周期性同期生に発火するニューロンを同定する予定である。
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