本研究は、光学技術及び多電極皿法を用いた電気活動記録により、神経回路を形成するGnRHニューロン活動の周期形成とその同期化のメカニズムを探求することを目的とし、研究期間中、以下の結果を得た。第一に、培養GnRHニューロンに電位感受性蛍光色素を適用し、光信号に変換された神経細胞の電気活動を計測することにより、神経回路を形成しているGnRHニューロン群全体の神経活動を観察した。個々のGnRHニューロンは互いに結合した細胞集団内で同期して自発性活動を呈していろことが明らかとなった。また、一個の細胞に刺激を与えると細胞間連絡を介して興奮が伝わった。この興奮の伝わりは、Na^+チャネル阻害剤:Ca^<2+>チャネル阻害剤で阻止され、ある種のK^+チャネル阻害剤で増弦された。第二に、視床下部ニューロンの多電極皿法による記録を試みた。GnRHニューロンを含む視床下部ニューロンを培養したところ、細胞は軸索を伸ばして他の隣接ニューロンと結合し、形態的に神経回路を形成した。多電極皿記録により、この視床下部ニューロンから長時間の記録(2-3時間)が得られた。隣接したニューロン同士で同期して発火する細胞を見いだした。同期発火するニューロン同士はシナプス様に結合していた。その発火周期は10-60分間隔で明らかな周期性は現在のところ検出されていない。さらに、これらの培養視床下部ニューロンを免疫組織化学的に同定したところ、一部はGnRHニューロンであると確定できたが、多くは非GnRHニューロンであった。これらの結果から、第一に、視床下部には少なからず同期して活動するニューロン群が存在すること、第二に、GnRHニューロンもその一部に含まれること、第三に、GnRHニューロンは非GnRNニューロンと同期発火する、即ち、GnRHニューロンの機能的ネットワークは異種細胞も含まれて形成されている可能性があることが示唆された。
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