(1)子宮頚部好銀性小細胞癌(ASCC)由来細胞株に及ぼす分化誘導剤の影響 ASCCの発生起源ならびに分化誘導療法の可能性を調べるため、分化誘導剤dibutyryl cyclic AMP(dB-cAMP)がASCCのin vitro培養細胞株TC-YIKに及ぼす影響を調べた。 dB-cAMP処理により、マクロファー一ジ(MΦ)系細胞特異的な表面マーカーCD14とHLA-DRの発現増強、インターフェロン-γ(IFN-γ)の発現、非特異的エステラーゼ染色の陽転(90%以上)、細菌の貪食像/吸着像(1%/22%)が認められた。さらにGM-CSF添加により細胞の増殖が促進された。以上より、dB-cAMPはASCC細胞株がMΦ系細胞に分化する過程を促進していることが示唆された。一方、dB-cAMP処理により10%弱の細胞が神経系の細胞への分化を示唆する星型の形態変化を示した。このように、TC-YIKはdB-cAMP処理によりMΦ系の細胞および神経系の細胞の両方に分化することが明らかとなった。これらのことは、ASCCが多分化能を有する未分化な細胞から発生することを示唆している。 (2)シスプラチン(CPDP)によるアポトーシス誘導とIFN-γの影響 IFN-γをASCC治療剤CDDPの補助療法剤として用いる可能性を調べるため、IFN-γがCDDPによるASCC由来細胞株のアポトーシス誘導に及ぼす影響ならびにその機序について検討を行った。 CDDP単独投与群に比べ、IFN-γ併用投与群では有意な生細胞数の減少ならびにアポトーシス増強効果が認められた。Fas抗原の発現がIFN-γによるアポトーシス増強の程度とよく相関していた。また、カスパーゼ阻害剤Z-VAD-fmkによりIFN-γによるアポトーシス増強が完全に抑制された。これらの結果より、IFN-γはFas抗原の発現を増強させることにより、CDDPにより誘導されるアポトーシスを増強させること、そしてIFN-γがASCCの治療にCDDPの補助療法剤として用いられる可能性が示唆された。
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