研究概要 |
1.体癌におけるI型糖鎖の発現機序の解明 β1-3ガラクトース転移酵素(GT)、β1-4GT活性を選択的に測定する系を確立した。この測定系を用いて、子宮体癌株(Hec108,SNG-M,SNG-II,HHUA,Ishikawa)、子宮頚癌株(SKG-II,SKG-IIIb,HKTUS)、卵巣癌株(RMUG-S,RMG-II)を酵素源とし、GT活性を測定したところ、5つの体癌株のうち4つの株で頚癌株、卵巣癌株に比べβ1-3GT活性が亢進していることが判明した。逆に、β1-4GT活性は体癌株に比し、頚癌株、卵巣癌株で亢進していることが判明した。すなわち、体癌ではI型糖鎖を合成するGTがII型糖鎖を合成するGTに比べその活性が亢進していたことから、体癌でI型糖鎖が優位に発現する機序が明らかとなった。さらに、少数例ながら各婦人科癌の手術摘出組織を用いた検索でも、培養細胞株における結果とほぼ同様の結果を示した。また、上記の培養株細胞を用いてβ1-4GTのcDNAによるNothern blotting、抗β1-4GTによるWestern blottingを行った結果、β1-4GTのmRNAの発現やβ1-4GT蛋白の発現が、子宮体癌株では頚癌株、卵巣癌株に比べ著明に少ないことが判明した。以上の成績から、癌化に伴う糖鎖の発現異常には、糖転移酵素遺伝子の発現亢進による糖転移酵素蛋白の増量と、これに伴う活性の亢進が密接に関連していることが明らかになった。 2.β1-4GT高発現株の生物学的特性の解明に関する研究 前述のβ1-4GTcDNAを用いたNothern blottingにて、β1-4GTmRNAの発現が少なかった子宮体癌株SNG-Mにβ1-4GTcDNAを導入し、G418抵抗性の5種のトランスフェクタントが得られた。これらトランスフェクタントはWestern blottingならびにNothern blottingにより、β1-4GT蛋白ならびにmRNAの発現が親株やMockに比べ亢進していた。
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