研究課題/領域番号 |
09671714
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
末岡 浩 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (90162833)
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研究分担者 |
土屋 慎一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70276327)
篠原 雅美 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10276321)
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
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キーワード | cell-free精子核脱凝縮 / ジスルフィド結合 / lysolecithin / dithiothreitol(DTT) / ヒストンH2B / プロタミン / tapering sperm |
研究概要 |
精子核のcell-free脱凝縮実験系を用いて、受精過程においてヒト精子核膨化機構に関与する精子核タンパクについて検討した。 塩の存在(Na^+で1.0M以上)、細胞膜の除去、ジスルフィド結合還元という条件を満たす、0.05%lysolecithin-5 mM dithiothreitol(DTT)-1.0 M NaCl Tris溶液によるcell-free精子核脱凝縮実験系を作製した。この系を用いて成熟精子核におけるヒストンの存在を示し、また抗ヒストン抗体を用いて蛍光下で膨化精子核の経時変化を検討した。 ヒト精子核を上記in vitro脱凝縮系で膨化させ、35%酢酸溶液により塩基性核蛋白を抽出した。抽出蛋白に対し抗ヒトヒストンH2Bポリクローナル抗体を使用したWestern blottingによる検索では、精子形成過程で核蛋白のほとんどがブロタミンに置換されるという過去の報告に反し、相当量の抗ヒストンH2B抗体に結合する蛋白バンドが検出された。 抗ヒストンH2B抗体およびFITC標織2次抗体を使用して蛍光下で精子核の脱凝縮過程を検討した。この方法により光顕的には観察が不可能であった膨化精子核が明瞭に観察可能となった。0.05%lysolecithinにより膜成分を除去した精子核に5mM dithiothreitol(DTT)-1.0 _M NaCl Tris溶液を添加することで脱凝縮を開始させると添加直後から精子核の径の増加が確認され、3分後には精子核の径が2倍以上となる完全膨化を示した。10分後には精子核は球状にまで変化した。また、この脱凝縮過程において蛍光強度の増加が確認された。肢凝縮に伴い、結合可能なヒストンの量に変化があったことが示唆された。しかし、精子形態により膨化に差を認め、tapering Spermでは膨化の径の変化が有意に少ないことが判明した。 精子核はその成熟過程で核蛋白がヒストンからプロタミンに置換され形態的機能的にコンパクトとなるが、射出精子核にも相当量のヒストンを含有しており、また脱凝縮過程でヒストンの結合性に変化を生じることが示唆された。
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