研究概要 |
種々の要因による胎児の一過性虚血とその後の再還流は脳,腎,肝など重要臓器に不可逆的な障害を生じる。心筋梗塞や脳血栓など虚血性疾患の壊死病巣の拡大には再還流に伴う炎症細胞侵潤やsuperoxideが重要な約割を果たすことが知られている。胎児においては、臓器の組織構造のみならず免疫細胞も未熟であり、組織の酸素分圧も低いことから成体同様の機序による障害が起きているや否は明らかでない。ラット胎仔の血流遮断再還流モデルを用いてサイトカインとアポトーシス関連蛋白を発現を検討した。 方法)妊娠19日Wistar系ラットをネンブタール麻酔下に開腹し,子宮動脈,卵巣動脈を20分間血管クレンメにて血流を遮断した後に1-6時間の再還流を行った.胎児より,肝,腎,脳を摘出し,RT-PCRにいIL-1α,IL-1β,IL-6,IL-8,TNF-α,IFN-γの炎症性サイトカインならびにFas,FasLの発現を検討した。 結果)ラット胎仔肝は構成的にIL-1α,IL-1β,IL-8を発現し,虚血再還流によりIL-1αβ,IL-8の増加とTNF-α,IFN-γの誘導,腎,脳は構成的にIL-1α,IL-8,TNFを発現し,虚血再還流によりIL-1αβ,IL-8の増加とTNF-α,IFN-γの誘導を認めた。また,いずれの臓器も虚血によりFas/FasLの誘導を認めた。 結論)胎児の一過性虚血再還流による臓器障害には虚血刺激によって産生される炎症性サイトカインとアポトーシス関連蛋白が何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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