成人の脳低温療法はすでに多くの施設で臨床展開されているが、新生児や子宮内の胎児の脳温に関しては詳細な検討は行われていない。我々は、本研究(課題番号09671720)において、胎児期、新生児期における脳障害のファーストステップとして、胎児および新生児脳温の貯留、脳鬱熱現象に着目し研究をすすめてきた。我々はすでに胎児胎盤循環中のATP分解産物であるアデノシンが、組織代謝を抑制することで体温調節機構に深く関与していることを報告した。本研究では、羊胎仔慢性実験を用いて、胎仔脳温を検討し、胎児ではATP分解産物が脳血流を微調節することによって胎児脳温を制御していることを明らかにした(Pflug Arch Eur J Phy 1998)。そしてこの制御機構の破綻が脳障害発生の素地となる可能性を示唆した(J Clin Endocrinol Metab 1997)。また同様に妊娠中毒症妊婦においてもアデノシンが子宮血流の調節に関与することを明らかにした(Trophoblast Reseach 1999 )。さらにヒト胎児においては血流の変化しやすい臍帯付着部位異常が脳障害発生の誘因となり、その見地から特に双胎(Fetal Diagn Ther 1999)や羊水過少(Gynecol Obstet Invest 1999)症例では極めて慎重な周産期管理が必要であることを報告した。
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