CGF法によるヒト子宮体部癌の多段階発癌機構解析に基づく診断治療法の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671726
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: (財)癌研究会
• 研究代表者: 平井 康夫 財団法人癌研究會, 癌研究所細胞生物部, 研究員 (00260076)
• キーワード: 子宮体癌 / 臨床病理学 / 多段階発癌 / エストロゲンリセプター / CGH

研究概要

子宮体部腫瘍性病変を臨床病理学的に再分類し、各発癌段階に特徴的な分子生物学的変異を同定することにより、子宮体部癌の発癌過程を解明することを目的とした。隣接する臨床部門と協力して、informed consentの得られた子宮体部腫瘍患者の手術材料より、腫瘍部及び正常部分の新鮮組織材料を採取した。組織材料は一旦凍結保存した後、DNA抽出及び病理組織学的検索に供された。本年度、約30症例について、詳細な臨床病理学的情報を入手して検討したところ以下の結果を得た。
1.腫瘍部新鮮組織材料より、エストロゲンリセプターおよびプロゲステロンリセプター活性を測定した。腫瘍の臨床病理学的検討によると高分化型の子宮体癌に有意にエストロゲンリセプター活性が高いことが判明した。
2.子宮体癌患者の体脂肪量を正確に測定するために、全員に全身のDEXA法を実施した。血中エストロゲン3分画の測定を同時に実施し、体癌患者の性ホルモン状態を推定した。欧米では体脂肪量と、閉経後にも持続する高エストロゲン状態が体部発癌に密接に関連するといわれるが、少なくとも日本の体癌では、高エストロゲン状態とはいえないものが相当数含まれることが明らかになった。
3.腫瘍組織より抽出したDNAについて、CGH(comparative genomic hybridisation)法により、全染色体上の遺伝子変異の有無を検索した。またDNAの修復機構の喪失と関連するreplication errorにもとづく遺伝的不安定性の有無を同じく解析した。遺伝的不安定性は、解析した子宮体癌症例の30%弱と高率にみられ、遺伝的不安定性が認められる症例では、CGHで同定できる全変異数は少ない傾向にあった。

研究成果

• [文献書誌] Jui-Tung Chen, Yasuo Hirai et al: "l-α-Hydroxyvitamin D3 treatmentdecreases bone turnover and modulates calcium-regulating hormones in early postmenopausal women" Bone. 20. 557-562 (1997)
• [文献書誌] Tomoyasu Kato, Yasuo Hirai et al: "Effect of l α-Hydroxyvitamin D3 on loss of bone mineral density immediately after artificial menopause" Endocrine Journal. 41. 299-304 (1997)
• [文献書誌] Nobuhiro Takeshima, Yasuo Hirai et al: "Clinical usefulness of endometrial aspiration cytology and CA-125 in the detection of fallopian tube carcinoma" Acta Cytologica. 41. 1445-1450 (1997)
• [文献書誌] Nobuhiro Takeshima, Yasuo Hirai et al: "Prognositic value of peritoneal cytology in patients with carcinoma of the uterine cervix.Gynecologic Oncology" Gynecologic Oncology. 64. 136-140 (1997)
• [文献書誌] 平井康夫, 竹島信宏,他: "子宮頸癌1b期のFIGO新分類(1b1、1b2)について-各種予後因子の検討-" 産科と婦人科. 64. 1247-1251 (1997)
• [文献書誌] 石谷敬之, 平井康夫、他: "混合癌をふくむ子宮体部明細胞腺癌の臨床細胞学的検討" 日本臨床細胞学会誌. 37(1月5日). (1998)