研究概要 |
平成10年度、卵巣癌の予後を推定し得る新分化度診断法を考案した.構造異型、核異型、核分列数の3項目が独立因子であることを証明した上で、以下の方法により分化度が決定される.平成11年度は、III期(TNM分類:T3)卵巣癌(311例)のみを対象にして、新分化度と化学療法の効果及び予後との関連性について検討した. [I]分化度診断法 a)構造異型:predominant pattern (>50%)で以下の如く決定. 管状:1点、乳頭状:2点、充実性:3点 b)核異型:核、核小体、クロマチンの性状で最も所見の強い部分を採用した. 軽度:1点、中等度:2点、高度:3点 c)核分裂数:腫瘍組織周辺の分裂数の多い部分で、明確なmitotic figuresのみ(metaphase, anaphase, telophase)をcountの対象とした.hyper chromatic及びapoptotic nucleiは除外された.0-9/10 HPF:1点、10-24/10 HPF:2点、【greater than or equal】25/10 HPF:3点 d)分化度(Gr ade: G):3項目の合計点を、以下のごとく3段階に分類した.3-5点:G1(高分化)、6-7点:G2(中分化)、8-9点 (低分化) [II]新分化度とDDP併用化療の効果との関係 DDPに対する感受性は分化度では無く、組織型によって決定された.即ち、漿液性、移行上皮、類内膜は高感受性、明細胞、粘液性は抵抗性であった.次に、高感受性群のみについて低分化程、CR率が低く、効果持続期間が短縮される. [III]新分化度と予後との関連性 拡大術式とDDP併用療法を受けたT3腫瘍患者の予後因子の多変量解析の結果、新分化度、化療の効果、残存腫瘍径、全身状態、明細胞、粘液性腺癌が予後因子として有用であった.以上より、新分化度は進行卵巣癌の予後因子として機能することを証明した.
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