研究概要 |
マウスエイズウイルスに母子感染によって感染した子マウスは、持続感染となるが、免疫不全症を発症することなく長期間の潜伏期の後に1/3のみが発症するにすぎない。adultマウスに感染させた場合、4週間という短期間に全てのマウスが免疫不全症を発症するのと著しく異なる。そこで、持続感染成立のメカニズムを明らかにすることによりHBV.HCVなどの治療や移植に新たな局面を生む可能性があると考えた。今年度は、新生児の特長は乳汁の摂取にあると考え、新生児の免疫機能と乳汁との関係を解析した。生後3-5日のマウスのヒゾウからリンパ球を分離し、抗CD3抗体やConcanavaline Aを用いて刺激、IL-4,IFN一γの産生をエライザー法にて、細胞の増殖はH3の取り込みで測定した。その結果、抗CD3抗体刺激では成熟したマウスに比べIFN一γの産生量が1/4-1/5に低下していたがIL-4の産生は差がないことが明らかになった。また、細胞の増殖は1/2に低下していた。一方、Concanavaline A刺激ではマウスの新生児リンパ球からのIFN-γ産生はエライザーの感度限界に近い程の低値であり、細胞の増殖能は1/5に低下していた。このように、新生児期の免疫機能は大人に比べて非常に低いことが明らかとなった。Concanavaline A刺激のさいに、adultマウス由来の抗原提示細胞を添加することによって、IFN-γ産生や細胞増殖能が改善されることからT細胞だけでなく、抗原提示細胞の機能も低いことが明らかになった。そこで、乳汁中に免疫機能をコントロールしている物質の存在を推定し、胃内容から採取したマウスの乳汁を添加してT細胞を抗CD3抗体で刺激したところ、著名にIFN-γ産生や細胞増殖能が抑制された。現在、この物質の同定を進めている。
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