母子感染におけるウイルスのキャリアの多くは、乳汁を介した経口感染によるものである。大人が感染すると急性感染症となり、重篤になることが多いが、子供ではキャリアとなり、大人になってはじめて慢性感染症として発病する。キャリア化の機序を解明することはHTLV-1や肝炎の予防や治療の開発に貢献できると考え、MAIDSウイルスをモデルとして解析した。 今回の実験で明らかとなったものに、パイエル板におけるフロラクチンリセプターの発現がある。プロラクチンは乳汁中に含まれているので、T細胞に与える影響を解析したがいまのところ優位な所見は得られていない。新生児は多量の乳汁を取得するので何らかの影響を与えている可能性があり、今後も解析を予定している。 次に明らかにしたのは、仔マウスのリンパ球の機能において、T細胞の増殖能が大人のマウスに比べて著しく低いことである。サイトカインの産生ではIL-2とgamma-IFNが増殖能と同様に低下していたが、LL-4は大人のマウスと同等かむしろ多かった。つまり、仔マウスではTh2タイプのT細胞が優位であることを証明した。Th2優位な期間(新生児期)にウイルス抗原に暴露させ、大人になってからウイルス抗原に対する反応性を検討したところ、無処置のマウスがフライマリーに増殖性を示したのに対し暴露されたマウスでは反応性は焼失していた。ウイルスのチャレンジを予定している。
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