研究概要 |
モルモット蝸牛より単離した外有毛細胞を用いた。電流記録はパッチクランプ、ホールセル法を用い、キャパシタンスまたはゲーティング電荷は共同研究者が開発したJClampを用いて計測した。電位依存性キャパシタンスと線形キャパシタンスは細胞内圧に依存することが知られている(Kakehata&Santos-Sacchi,1995)ので、本実験では細胞内圧の影響を避けるためにcollapseされた細胞を用いた。 種々の持続時間や種々の電位のプレパルスの後でキャパシタンスまたはゲーティング電荷を測定した。保持膜電位に対して負の電位のプレパルスによって、電位依存性キャパシタンスが最大となる電位(V_<pkCm>)は脱分極側へ移動し、正の電位のプレパルスによってV_<pkCm>は脱分極側へ移動した。-150mVから+50mVにわたるプレパルス(持続時間:1s)に対して、V_<pkCm>の電位変化はシグモイドカーブを描いた。V_<pkCm>の変化は、10-15mV(n=4)であった。V_<pkCm>変位の、プレパルスに対する最大変化は、外有毛細胞の静止膜電位である-70mV付近であった。プレパルスの効果はその持続時間に依存しており、30ms以下では認められなかった。トリプシンやアスピリンの処理によっても、プレパルスの効果は影響を受けなかったことにより、細胞骨格やsubsurface cisternaeはこの機構に関与していないことが示唆された。 これらの結果より、外有毛細胞は静止膜電位を変化させる因子によって、その運動能、ひいては音情報が修飾を受けることが示唆された。例えば、遠心性神経の興奮は外有毛細胞の静止膜電位を過分極へ移動させるのみならず、運動能の最大ゲインを得る電位を脱分極側へ移動させることによって、cochlear amplifierのゲインを減じ、抑制に働く可能性が示唆された。 本研究の成果は第7回日本耳科学会にて発表した。また現在欧米誌に投稿中である。
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