正常ハムスターの顔面神経結合組織、特に神経内膜を構成するコラーゲン線維を透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した。特に走査型電子顕微鏡での観察においては標本をNaOHで処理し神経線維や基底膜および他の細胞成分を除去することでコラーゲン線維の立体構造を観察しやすくした。それによるとハムスター顔面神経におけるコラーゲン線維はラットのそれと同様の形態を呈していた。すなわち側頭骨内顔面神経の末梢側において神経内膜を構成するコラーゲン線維は豊富に存在していた。またその立体構造も細いコラーゲン線維束がメッシュ状になり神経線維を覆っている内層と、太いコラーゲン線維束が神経の長軸方向に走行する外層とから成る、いわゆる二層構造を呈していた。一方側頭骨内中枢側においてはコラーゲン線維は疎となり二層構造は消失し、細いコラーゲン線維が縦横に走行しているのみであった。このことは外力や炎症の波及に対して中枢側は末梢側に比べ脆弱であることを示し、他の側面からの報告と同じように顔面神経麻痺発現の際に側頭骨内中枢側がその責任病変となりやすいことを強く示唆させた。次年度は同様の観察をミエリン形成不全ミュータントハムスターについて行い、さらには正常ハムスターおよびミュータントハムスターを用い顔面神経麻痺モデルを作成し、このコラーゲン線維の構造がどのように変化するかを観察し比較検討する予定である。
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