研究概要 |
1)研究システムの構成 自覚的垂直位と頭位の変動を指標として前庭機能異常を明らかにする目的で,今回補助金にて購入した固視能力検査装置と手持ちの自覚的垂直位測定装置によりなる頭位解析システムを構成し,自覚的垂直位測定中の任意の時点で眼位と頭位を記録可能とした。 2)平成9年度実績 試行的研究として,先ず一側前庭障害例の自覚的垂直位が臨床的にどのような意義を有するかを調べた。温度眼振検査所見にて20%以上の30例において,真の垂直位に対して自覚的垂直位の偏倚が3°以上を示す者(A群),3°以下1°以上の者(B群),1°以内の者(C群)の3群に分けて検討した。この3群における頭部動揺を面積および軌跡距離を視標として求めたところ,統計学的に5%の危険率でA群とC群間,B群とC群間には有意の差を認めたが,A群とB群には有意差があるといえない成績を得た。しかし,頭部動揺図は全体的に求心型が多く,群別の差異を見出せなかった。 次に,頭部動揺中心が自覚的垂直位測定中移動するのか,移動するとすれば測定方向と関係があるか否かを調べた。その結果は測定する方向(左から右または右から左)と同一方向に移動するものが有意に多く,測定時頭部動揺中心が測定方向の影響を受けることが明らかになった。このことは,今後検討する自覚的垂直位測定時の頭部変動が重要な意義を持つものと考えられる。なお,以上の結果自覚的垂直位の大きさは,臨床的に前庭障害の程度を示唆すると結論した。
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