1.血管条の細胞構築・細胞間結合と血管条毛細血管網の発達過程 (1)内耳血管条中間細胞と血管周皮細胞・内皮細胞のgap junctionによる細胞間結合を、中間細胞に注入した色素の拡散によって証明した。(2)内耳血管条内の毛細血管網を架橋する細胞を免疫組織化学的方法と透過電子顕微鏡法をつかって明らかにした。基底層に包まれていることなどの形態的特徴から、血管周皮細胞との発生的関連と毛細血管網形態の維持に関する役割が考えられる。(3)スナネズミをつかって、血管条に特徴的な毛細血管網が発達する経過を時間経過を追って定量的に調べた。血管網の原型はまずラセン靭帯内につくられ、その後血管条内の血管とラエン靭帯内の血管に分かれてゆくことを示した。 2.辺縁細胞と中間細胞のイオンチャネル等の膜輸送体 (1)辺縁細胞のNa-K-Cl共輸送体活性を、単離辺縁細胞の等張条件下での体積変化を使って証明した。 (2)細胞内微小電極をもちいて辺縁細胞の膜電位が基底側膜のClコンダクタンスに大きく依存していることを示した。(3)辺縁細胞に紫外線をあてると強い自家蛍光を発すること・この自家蛍光が細胞内のNADHによること示し、この蛍光を利用して辺縁細胞のグルコース単輸送体(GLUT)活性を証明した。 (4)単離中間細胞をパッチクランプ法で調べ、内向き整流性K^+チャネル電流と電位依存性K^+チャネル電流存在を電気生理学的に証明し、膜電位の形成に主要な役割を果たしていることを示し、これらのチャネルが内リンパ直流電位の形成と血管条内のK^+輸送に深く関与していると考察した。(5)内向き整流性K^+チャネル(Kir4.1)に対する特異抗体を作製し、Kir4.1のチャネルタンパクは血管条内では中間細胞に局在していることを証明した。
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