人工内耳における聞き取りは、蝸牛での電気刺激がいかなるように中枢へ伝達されるかにある。人工内耳の幼小児への適応決定のための聴覚伝導路の成熟に関する研究として、対象に正常猫を用いて、麻酔後開頭後、一部除脳ののち微小ガラス電極により脳幹への聴覚伝導路の伝達について測定した。耳への音響刺激はスピーカーにより、内耳蝸牛への電気刺激は、中耳骨胞開放の後直接タングステン電極を刺入することにより行なった。 その結果、蝸牛神経核では前腹側核や後腹側核では主に音刺激後約1.2-1.5msecで、電気刺激においては0.8-1.3msecで、電場電位やユニット電位が見られ、かつ特微周波数の存在が確認された。ただし音響刺激と電気刺激を比べると、音響刺激において蝸牛神経核での反応がやや広い結果であった。一方背側核では明かなユニット電位は認められなかった。下丘においては、蝸牛神経核のように明かな反応は得られなかったが、音響刺激、電気刺激ともに全般に広い範囲でユニット電位が確認された。一部、電気刺激において蝸牛基底回転を破壊後同様の検討を行うと、特に破壊部位に近い部位において反応する範囲が広がる傾向が見られた。これはつまり聴覚伝導路が、多少変化しうることを示すもので聴覚系の可塑性を意味すると考えられる。現在、聾猫または部分的難聴猫を用いて聴覚伝導路について検討している。
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