人工内耳は聾もしくは高度難聴者への治療法として既に確立され、平成11年3月現在、本邦で1300例以上、当院で約140例の症例に人工内耳手術を行ってきた。今研究では、小児人工内耳の臨床応用への裏付けとして動物実験の基礎研究によるその可能性の究明である。 正常仔猫、生後早期聾動物を使用し、電気刺激の有無により聴覚伝導路の変化について検討した。慢性電気刺激の効果は新生聾仔猫の蝸牛神経核細胞面積を指標に行った。生後10日にカナマイシンとエタクリン酸で聾にした16匹を対象に60日から719日までに左側に電極を埋め込み、いくらかに98から665に慢性電気刺激を加えた。2deoxyglucose(DG)を取り込んだ蝸牛の細胞面積と下丘の取込み面積を調べた。2DG取込み部分の細胞面積は刺激開始時期が140日までの仔猫では有意に増加し、下丘の2DG取込み部分の面積は180日まで刺激の有無によらず増加した。これは140-240日の間の電気刺激が有効に聴覚神経系に働き、人工内耳手術の適切な時期があることが解明された。
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