聴覚伝導路の正常発達には、成熟期に充分な求心性神経支配が必要であると考えられ、難聴の場合にも加齢によってある程度発達することが分かっている。今研究では以下の点についての検討した。聴神経伝導路の正常発達はいかなるものか、出生後早期聾の場合どうなるか、さらに人工内耳からの刺激、つまり慢性電気刺激がいかなる影響をあたえるか?である。 結果:(1)蝸牛神経核細胞面積では、個体差、左右差が大きく、出生後早期聾仔猫では正常聴力仔猫に比べ、20-30%の細胞面積の減少が認められた。下丘中心核神経細胞においても、両側聾の場合には細胞面積の減少が認められた。つまり聴覚伝導路の神経細胞の正常の成熟には、成熟期に充分な求心性神経支配が必要であるが、なくても加齢によってある程度は成熟する。(2)蝸牛神経核細胞面積は、刺激側と反対側では差は認められなかったが、2DG野はnon-2DG野より三核いずれにおいても大きく、その多くに有意差が認められた。つまり蝸牛内の局所慢性電気刺激により、蝸牛神経核内の特定の部位が機能的活動性が増し、その部位に限っては成熟期の神経細胞の成熟に関与している。(3)すべての期間において、慢性刺激の下丘における2-DG取り込み率が増加し、人工内耳による慢性電気刺激の効果が確認された。聾期間別にみると少なくとも刺激開始が生後180日までは2-DG取り込み率が徐々に増加し、500日では低下し臨界期の存在が示唆された。また非刺激群においても、180日まで増加する傾向がみられた。つまり、先天聾児の人工内耳手術を考慮するならば、臨界期が存在し、ま
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