研究課題/領域番号 |
09671762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
青木 和博 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助教授 (10130139)
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研究分担者 |
濱田 幸雄 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (60277069)
三谷 幸恵 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (30233894)
江崎 史朗 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 講師 (40147286)
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キーワード | 中耳粘膜 / 中耳粘膜換気 / 中耳含気腔容積 / 中耳含気腔全圧 / 再気胞化 |
研究概要 |
1.臨床的研究 小児滲出性中耳炎例の鼓膜換気チューブ留置時に、保護者の承諾の上で29例について極少量の中耳粘膜を採取し、その炎症性変化度に基づいて組織学的分類を行い、チューブ留置期間中の中耳含気腔内の全圧、含気腔容積の変化について計測し、この3つの所見およびとチューブ抜去後の予後について比較検討した。その結果、粘膜病変度の軽度な症例では全体的に含気腔容積は大きく、全圧のピーク値も高い傾向を示し、チューブ留置治療に伴う両者の改善もチューブ留置後1年末満の早期から認められた。一方、粘膜病変度の増悪した症例では含気腔容積や全圧ピーク値も軽度粘膜病変例と比較して有意に小さく、チューブ留置治療に伴う両者の有意な改善も18ヵ月以上の長期留置後に初めて観察された。含気腔容積の増加は、含気腔粘膜下の骨代謝層の改善に伴う結果と考えられた。一方、含気腔全圧の変化をほぼ粘膜が正常に帰した症例で観察すると、外耳道閉鎖後15〜30分で放物線的に上昇してピーク値に達し、その後30〜60分で直線的に低下して0mmHgを示していた。 2.動物実験的研究 上記の中耳腔内圧の変化について、成熟家兎を用いて動物実験学的に検討を加えた。耳管を閉鎖した後、中耳腔内に経外耳道的に酸素プローベを留置して外耳道を密閉し、酸素のマスク吸入や末梢血管拡張剤と末梢血管収縮剤投与に伴う中耳腔内酸素分圧の変化を計測した。その結果、中耳腔内の酸素分圧は血管内の酸素分圧や組織内の血流量に比例して変化することから、中耳粘膜を介したガス交換が行われていることが判明した。このため臨床例に観察された含気腔全圧の変化が、中耳粘膜病変に伴うガス交換能の変化による結果と考えられ、粘膜下の含気腔骨代謝層の活性化に伴う再気胞化と絡めて、含気腔圧の計測は中耳炎症病態度の把握に有意義な検査方法と考えられた。現在、その予後との関係についてさらに検討中である。
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