研究課題/領域番号 |
09671762
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
青木 和博 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助教授 (10130139)
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研究分担者 |
歌橋 弘哉 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (60287208)
濱田 幸雄 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (60277069)
三谷 幸恵 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (30233894)
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キーワード | 含気腔容積 / 中耳粘膜病変 / 中耳腔全圧 / 粘膜ガス交換能 / 二酸化炭素 / 酸素 |
研究概要 |
1.臨床的研究 小児滲出性中耳炎例の保護者の承諾を得て、鼓室換気チューブ留置時に中耳粘膜を採取した44例を対象に、その組織学的炎症性変化度と、中耳含気腔内全圧の変化、およびチューブ抜去後の予後について比較検討した。その結果、粘膜病変度の軽度な症例では増悪した症例と比較して、全圧のピーク値も有意に高く、治療に伴う全圧の上昇もチューブ留置後1年未満の早期から認められた。一方、粘膜病変度の増悪した症例でも、18ヶ月以上の長期チューブ留置に伴って全圧の有意な改善が観察された。また、チューブ抜去時の全圧と予後の関係について検討を加えた結果、抜去後に経過の良好な症例は穿孔残存例や再発例と比較して有意に全圧が上昇していた。以上により、中耳含気腔内には中耳粘膜の影響を強く受けた全圧の変化が観察され、中耳粘膜の改善に伴って全圧の上昇することが判明した。また、チューブ抜去時の全圧を計測することで、予後を判定することも可能と考えられた。 2.動物実験的研究 上記の中耳腔内全圧の変化について、成熟家兎を用いて動物実験学的に検討を加えた。耳管を閉鎖した後、中耳腔内に経外耳道的に酸素プローべ、温度センサー、デジタルマノメーターを留置して外耳道を密閉し、この中耳腔内を(1)大気、(2)5%CO_2混合ガス(O_2は20%)、(3)5%O_2混合ガス(CO_2は大気と同等、N_2でバランス)で置換した各グループで中耳腔全圧の変化と中耳腔内酸素分圧の変化を比較検討した。その結果、中耳腔内の酸素分圧は(1)(2)グループでは同様に一定の割合で低下したが、(3)ではほとんど変化しなかった。一方、全圧の変化は(1)では陽圧側で山型のカーブを形成し、(2)では陰圧側で谷型のカーブを形成し、(3)では陽圧に変化した圧の低下が(1)と比較して明らかに緩徐であった。以上より、中耳腔内では中耳粘膜内血管と腔内のガス分圧較差に応じたCO_2、O_2のガスの交換が盛んに行われており、この粘膜換気が中耳腔全圧の変化をもたらしていることが判明し、臨床例で観察された全圧変化の機序を明らかにした。
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