本研究では、半規管の内リンパ対流が選択的にブロックされた、半規管遮断動物の温度眼振を三次元分析し、(1)外側半規管を遮断しても温度眼振反応の大きさに著明な変化は見られなかった。(2)遮断術後には、対流により生じ、頭位に依存するが、頭位を考慮して空間座標から見ると重力と直角で空間に固定された反応が、頭部に固定された反応となった。(3)重力に平行な成分は、空間に固定され、遮断術後には一相から最も大きな成分として記録された。これらの結果は、内耳に生じた温度変化が、内リンパ対流を介さずに、十分大きな半規管神経放電を生ずること、および直接または中枢を介して耳石器の関与も大きいことが、明らかになった。本年は、これらの結果をまとめて新井が2つの国際学会に報告すると共に、論文にまとめた。 内リンパ対流を介さない反応として、内リンパ液の体積変化などなお感覚細胞を介するものと、神経末端直接の温度変化の影響との区別、さらに、中枢前庭系を介さずに、直接耳石器への温度変化が眼振を生じうるか否かについてを検討する目的で、ハトの頭振指標とした実験系を構築した。回転後眼振を頭部運動の回転成分を三次元に分析することが可能となり、11月の学会で西田が発表した。しかしこの解析には未だ極めて長い解析時間を要するため、当該期間内には内耳の部分的感覚細胞傷害動物を作成するに至らなかった。
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