ヒトの肥満細胞には粘膜型、結合織型の2つの亜型が存在する。鼻アレルギー発症においては特に粘膜型肥満細胞が鼻粘膜上皮層より固有層の表面に増多し臨床像と相関する。最近ヒト肥満細胞に対する唯一の増殖因子としてstem cell factor(SCF)が注目されている。今回の研究目的は鼻粘膜分離上皮細胞からSCFが産生されているか否かを鼻粘膜培養上皮細胞を用いSCF産生が行なわれているか否か、SCFメッセンジャーRNAの発現を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって確認することにあった。 1.鼻腔整復術のために外科的に切除された下鼻甲介粘膜を0.1%プテアーゼと24時間培養の後、表層を軽く擦過することにより得られた上皮細胞をコラゲン膜上にのせ、培養すると培養皿には3日間で一層の上皮細胞の膜が形成された。 2.この培養上皮細胞から全RNAを抽出分離し、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型としてアクチン用とSCF用のプライマーでPCR反応を行なったところ、SCF mRNAが発現された。この発現は非アレルギー、アレルギー性鼻炎例共に見られたが、SCF/アクチン比は後者に高く見られた。 3.同時に鼻粘膜上皮細胞培養上清液中のSCF量をELISA法で測定したところ、培養3日より増加し7日でプラトーに達した。また培養上清液中のSCF量は非アレルギーよりアレルギーに有意に多かった。
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