研究概要 |
オートラジオクラフィ及びテストステロン(T)抗体を用いた組織免疫による形態学的観察結果から喉頭癌細胞がトリチイム標識Tに対し親和性を有すること,さらには抗体特異陽性細胞が喉頭癌組織に存在することが明らかとなった。さらにRT-PCR産物の電気泳動により喉頭上皮癌細胞が男性ホルモン受容体(AR)mRNAを発現していることが明らかである。以上の現象から喉頭上皮癌細胞は特異AR受容体発現がありその発現及び維持に男性ホルモンの何らかの関与が考えられる。内分泌学的な視点から喉頭癌細胞と男性ホルモンの関係を知るために喉頭癌細胞株(HEp-2)を用い,AR蛋白及びmRNAの発現を検討した後,細胞増殖への男性ホルモンの影響を検討した。 免疫組織化学的観察よりHEp-2細胞はAR発現をしており,T投与後は特に核に局在する。ARのスタートコドンから70番から367番までPCR産物として出来るプライマーを用いて行ったRT-PCR産物の電気泳動によりHEp-2細胞はARmRNAを発現していることが明らかとなった。しかし,塩基配列分析により,この転写調節領域に存在するCAG繰り返し配列の内9つがHEp-2細胞のARmRNAには欠損していることが明らかとなった。12検体の喉頭癌組織サンプルを検討したが.,この9このCAGの遺伝子欠損は確認されず,この変異が喉頭癌に一般的でないことが明らかとなった。1μM以上の濃度Tプロピオネイトは,HEp-2細胞の増殖を抑制し3日後には99%以上ににも及ぶこの癌細胞の死を誘導することが明らかとなった。高濃度のコレステロールをコントロールとして用いたが,1mMの高濃度でさえ何ら影響を与えなかった。これら結果は,ARmRNAにおける転写調節領域における9つのCAG繰り返し配列の遺伝子欠損は,男性ホルモンの影響下で喉頭癌細胞株HEp-2細胞の細胞死の誘導をもたらす可能性が示唆された。
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