研究概要 |
喉頭器官の発達及び維持に男性ホルモン(A)の関与を裏付ける現象が音声の性差をはじめいくつか存在する。喉頭組織における男性ホルモン受容体(AR)は,1979年Saezの生化学的研究に始まり,その存在の検討がなされたが定説が得られていなかった。その後^3H標識A及びAutoradiogrph,そして免疫組織を用いた形態的研究により喉頭はその癌も含め男性ホルモンの標的の1つであると確認されるに至った。喉頭癌組織の中にはARmRNAを発現するものが存在することをrtPCRを用い確認した,これは先の形態的な観察を裏付けるものであると考える。喉頭細胞のA感受性の存在の有無について,喉頭癌細胞株(HEp-2)を用いて行い,この細胞はARmRNA及び蛋白の発現を示し,培養実験からA感受性を有し,10^<-8>以上の濃度では細胞死が誘導される。その細胞死の際,P53及びBax蛋白の発現を伴うことが免疫組織化学により明らかである。一方,PCR産物の電気泳動移動度と塩基配列検索によりこの細胞のAR遺伝子には第1Exonに欠損変異が存在することが明らかとなる。現在代謝酵素を検討しており今年度5月日本耳鼻咽喉科学会101回総会にて報告予定としている。 上記結果は,喉頭は男性ホルモン標的器官であり,喉頭細胞及び癌が男性ホルモン感受性を有しその細胞生理に男性ホルモンが関わっている事を明らかとしている。また男性ホルモン誘導癌細胞死の際その受容体遺伝子に欠損変異が関与する可能性をも証明するものである。
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