めまい、平衡障害を主訴に、耳鼻咽喉科外来を受診する患者の多くは、詳細な問診、生理機能検査、画像診断により確定診断が行われ、適切な治療を受けている。しかし、これら緒検査にて顕著な異常所見を見いだすことができず、その結果、めまい症と一括して診断される患者群が存在する。このめまい症の病因の1つとして、耳石機能障害の関与が示唆さている。現在、耳石機能を実用的かつ正確に評価することができる検査法がなくこれらの検査法の開発は必須と思われる。我々はこれまで、偏中心性回転刺激(Eccentric Rotation:EcR)を用いての耳石機能評価を試みてきた。EcRでは、耳石系と水平半規管が同時に刺激を受けるため、純粋に耳石機能を知ることは理論的に困難である。今回は、耳石系のみを純粋に刺激することが可能な偏垂直軸回転検査装置(Off-Vertical Axis Rotation:OVAR)を開発した。またこの装置を用いて、視覚系、半規管-眼反射と耳石-眼反射との情報伝達の有無について検討を加えた。 聖マリアンナ医科大学に既設の回転椅子に油圧を用いた傾斜不可装置を付加してOVAR装置とした。最大傾斜角度は30°である。健康成人12名を対象として検討を加えた。いずれの被験者についても良好な眼振の解発が認められた。半規管-眼反射の可塑性が耳石-眼反射におよぼす影響について健康成人ボランティア12人を対象として検討を加えた。この両反射系の間で情報伝達が行われている可能性が示唆された。良性発作性頭位めまい症患者4名、メニエール病患者4名を対象として耳石機能について検討を加えた。良性発作性頭位めまい症患者については耳石機能に異常が認められる群とそうでない群の2つの群が存在することを示唆する結果が得られた。メニエール病患者については利尿薬であるフロセマイド負荷前後の耳石機能について検討を加えた。フロセマイドを投与後、耳石機能が改善する傾向が認められた。
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