再発を繰り返す成人喉頭乳頭腫症例の腫瘍組織からHPV16ウイルスゲノムを持ち継代培養が可能な腫瘍細胞(HLP16細胞)を調整することができた。HLP16細胞中のHPV16ウイルスゲノム(HPV16遺伝子)は宿主HLP16細胞染色体外にエピゾーマルな形で存在していた。HLP16細胞のカルシウム誘導性分化に伴うHPV16遺伝子転写の活性化について解析した。HPV16遺伝子転写はビオチン標識部分HPV16ウイルスゲノムRNAプロ-ブを用いたIn situ hybridization法(ISH法)によって解析した。このISH法を用いた場合、E6プロ-ブ[nucleotides(nt)112からnt498]とE7プロ-ブ[nt621からnt879]のどちらのRNAプロ-ブを用いても、HPV16転写産物は未分化HLP16細胞(0.1mM低カルシウム存在下)では検出し得なかった。E6プロ-ブによるシグナルはHLP16細胞の分化誘導に際し変化を認めなかった;E6転写はカルシウムの添加(1.0mM)によって検出不能のままであった。一方、E7プロ-ブによるシグナルは分化したHLP16細胞で増加した;E7転写はカルシウムの添加(1.0mM)によって明確に検出された。これらの結果は、HLP16細胞におけるHPV16遺伝子の分化誘導性転写がnt498(E6プロ-ブの3'末端)とnt879(E7プロ-ブの3'末端)の間より開始されたことを示唆する。
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