研究概要 |
平成10年度末までに、我々は、電気刺激による内耳蝸牛外有毛細胞の遅い収縮にはω-コノトキシン感受性PまたはN型カルシウムチャネルを介する細胞外カルシウムイオンの流入にて活性化される、BK型カリウムチャネルよりのカリウムイオンの流出とフロセミド感受性塩素イオンチャネルよりの塩素イオンの流出が各々独立して関与することを解明した。さらにBK型カリウムチャネルの活性化にカルシウム・カルモデュリンカイネースIIが関与していることを解明し、さらに蛋白脱リン酸化酵素阻害薬:カリクリンA,オカダ酸,カンタリジン,デルタメスリン,ベンジルホスホン酸のうち、タイプ1と2A蛋白セリン/スレオニン脱リン酸化酵素の阻害薬であるカリクリンAにより、外有毛細胞の電気刺激による収縮および細胞内塩素イオン濃度の変化が消失することを解明した。この阻害作用がカリウムイオンコンダクタンスを高めるバリノマイシン存在下やカルシウムイオンコンダクタンスを高めるA23187存在下でも認められるが、塩素イオンの透過性を高めた状態では認められないことを確認した。また蛋白セリン/スレオニン脱リン酸化酵素を活性化するNアセチルスフィンゴシンにより、外有毛細胞の電気刺激による収縮および細胞内塩素イオン濃度の変化は消失した。この作用は、バリノマイシンやタイプ2A蛋白脱リン酸化酵素阻害薬であるオカダ酸存在下では認められなかった。これらの結果より外有毛細胞の収縮に関与するカリウムチャネルの活性化にはオカダ酸感受性の蛋白脱リン酸化が抑制的に関与し、また塩素イオンチャネルの活性化にはカリクリンA感受性の蛋白脱リン酸化が関与していることが示唆された。一方で、同様の電気刺激による収縮機能が蝸牛内有毛細胞にも存在することが確認された。現在、その機能の解明と内有毛細胞持つ機構の解明を進めている。
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