研究概要 |
我々はこれまでベーチェット病患者血清に反応する抗原蛋白をDNAレベルで同定した。その遺伝子(bes-1)は2,550bpからなり、予想される蛋白の大きさは約96kDaであった。そこでbes-1がベーチェット病の病因あるいは増悪因子としてどのような役割を果たしているかを解明するために、本研究を行った。まずbes-1とヒト組織とのホモロジーを調べたところ、ホメオボックス遺伝子で網膜のガングリオン細胞発現のみられるBrn-3bとのホモロジーが明らかとなった。次にbes-1が実際にひとつの蛋白を発現しているかを調べた。bes-1をPCRで増幅した後、ベクターに挿入し大腸菌内で蛋白を発現させ、患者血清を用いてWestern blottingを行った。その結果、患者では3例中3例に95kDaに強いバンドがみられたのに対して健常人では3例全例で反応がみられなかった。さらにbes-1の発現している蛋白(BES-1)の分離精製をおこなった。bes-1を3種類の蛋白精製用ベクターに挿入し、大腸菌での蛋白発現を試みた。その結果、すべてのベクターを用いた系で蛋白の発現が確認された。ただ蛋白の発現量は非常に少なく、精製は容易ではなかった。唯一、pETベクターを用いた方法で分離精製に成功した。今後このBES-1を用いて、患者血中抗体価の変動やリンパ球の反応をモニターすることで炎症発作の予知、さらには治療に対する発展を期待できる。
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