最近の眼科臨床医学において、角膜屈折矯正手術が注目を集めており、radial keratotomy(RK)やastigmatic keratotomy(AK)は、角膜形状を変えることで屈折を正常化することを目標としている。一方、これらの治療に対する角膜組織反応の細胞生物学的な解析はいまだ十分とはいえず、とくに創傷治癒に関する研究は重要と思われる。現在行っている研究は、実験的角膜矯正手術を対象とし、組織学的解析によりそのストレス応答すなわちストレス蛋白の動態に関して解析することを目標としている。実験方法としては、白色家兎を麻酔し角膜に対してradial keratotomy (RK)をヒトに準じて施行した。まず、光学部および切開部に相当する上皮面を専用のマーカーでマークした。次に、RK用ダイアモンドナイフを用いて、8本の放射状切開を作成した。手術後1日、2日、3日、4日、5日、7日および14日に角膜を細隙燈顕微鏡で観察するとともに前眼部写真を撮影した。その上で眼球を摘出し、以下の解析の試料とした。この際、手術を施行しない片眼をコントロールとした。組織学的検討としては、はじめに光学顕微鏡で実験的角膜屈折矯正手術を施行した家兎角膜の形態学的特徴を観察した。次に、70kDストレス蛋白に対する抗体を用いた免疫組織化学的検討を行った。すなわち、70kDストレス蛋白に対するマウスモノクローナル抗体を1次抗体とし、免疫組織化学法でその角膜における局在を明らかにする実験を行った。現在は、染色性の向上を目標に免疫組織化学法の条件を検討中であり、実験を継続している。
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