研究課題/領域番号 |
09671792
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
桐生 純一 京都大学, 医学研究科, 助手 (80281096)
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研究分担者 |
喜多 美穂理 京都大学, 医学研究科, 助手 (00252453)
本田 孔士 京都大学, 医学研究科, 教授 (90026930)
木村 英也 京都大学, 医学研究科, 助手 (50252440)
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キーワード | 白血球 / 網膜循環障害 / 非侵襲的評価 |
研究概要 |
糖尿病ラットでの結果をみると、網膜毛細血管での白血球速度は糖尿病群と正常対照群で有意差なく、循環動態は両群ともスムーズであった。これに対し、網膜毛細血管床に捕捉された白血球数は糖尿病群で有意な高値を示した。以上より糖尿病ラットにおいて白血球の粘着能亢進・変形能低下が示唆されたが、網膜を循環する白血球は循環障害を生じているルートを避けることで、毛細血管床での速度を保っている可能性がある。虚血再潅流モデルでは、白血球のローリング速度は再潅流後12時間で有意に減少した。網膜内に捕捉された白血球数は再潅流24時間後にピークに達した。接着分子であるICAM-1は脳における虚血再潅流において発現増加が認められ、12時間後にピークに達することも知られており、その時間的特徴は我々の実験結果とよく符号する。虚血再潅流モデルにP-selectinモノクローナル抗体(ARP2-4)を事前に投与したところ、白血球ローリング数は著明に減少し、また網膜内の捕捉白血球数も抑制された。selectinを介した白血球のローリングを抑制するfucoidinをARP2-4と共に投与するとさらに減少が認められ、ローリング数は著明に減少した。この結果は虚血再潅流後の白血球の接着と侵入において他のタイプのselectinも関与しており、すべてのタイプを抑制することでローリングがほとんどみられなくなったものと考えられた。内網状層はARP2-4投与により、投与しない場合の204%の厚さとなり保護効果が認められた。また神経節細胞層における細胞密度はARP2-4投与により約2倍の保護効果があった。血液試料のレオロジーでは、ELS通過時間では糖尿病群において有意な通過時間の延長がみられたことより、ELS通過時間の延長の原因として白血球の通過障害が考えられた。以上、糖尿病において白血球が毛細血管レベルでの血流障害を惹起する可能性が示唆された。
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