研究課題/領域番号 |
09671798
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大路 正人 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90252650)
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研究分担者 |
田野 保雄 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (80093433)
不二門 尚 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50243233)
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キーワード | 化学的硝子体切除 / 人工的網膜剥離 / コンドロイチナーゼ / ヒアルロン酸 / コンドロイチン硫酸 |
研究概要 |
コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンは網膜と硝子体および網膜と網膜色素上皮の間の接着に重要な働きをしている。われわれは、以前の研究により、硝子体内に注入したコンドロイチナーゼABC(C-ABC)が硝子体中のヒアルロン酸を分解するだけでなく、網膜表面よよび、網膜裏面に存在するコンドロイチン硫酸をも分解し、化学的硝子体切除に有効であるだけでなく、意図的硝子体剥離や意図的網膜剥離の作成にも応用できることを証明した。今年度はC-ABCの硝子体注入の安全性を網膜電図を用いて機能的に検討するとともに、組織学的にも検討した。 有色家兎の硝子体腔に10U/50μlのC-ABCを注入し、1日後、1週間後に網膜電図を測定した。C-ABCを注入1日後、1週後ともに、a波、b波ともに、balanced salt solution注入群あるいは注入前と比較し、有意な差を認めなかった。 網膜電図の測定後、眼球を摘出し、ヘマトキシリンエオジン染色で網膜の障害を検討した。C-ABC注入1日後および1週後の網膜には炎症細胞の浸潤などの炎症所見は認めず、網膜の層構造も正常に保たれていた。今回の結果より、10UのC-ABCの硝子体腔内注入は安全であると考えられた。 今回の研究の臨床的意義付けとして、人工的網膜剥離の作成がある。人工的網膜剥離の作成は、難治性の加齢黄斑変性の手術治療として注目されている中心窩移動術において非常に重要となる。臨床的研究として加齢黄斑変性や近視性新生血管黄斑症に対して中心窩移動術を行い、以前の治療法に比べ有効な成績が得られたものの、人工的網膜剥離を作成する手技が未完成であり、本研究を臨床研究に向けて更に進める必要があることが望まれた。
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