前回はラットの網膜色素細胞をマウスに導入する異種移植を施行してACAIDの導入が得られなかった。しかし、本来、移植手術は同種移植であるので、今回はラットの網膜色素細胞をラットに導入する同種移植にてACAIDの導入が得られるか否かを検討した。 Lewisラットの網膜色素細胞を既報の方法を用いてシート状に取り出して培養した。その培養網膜色素細胞シート上にBSAの存在下で、マクロファージを播種して24時間培養し、その上澄みを無処置Lewisラットに静注し、1週間後にこのラットをBSAで感作、抗原特異的な遅延型過敏反応が抑制されているか否かを検討した。しかし、残念ながら遅延型過敏反応の抑制は認められなかった。 次に、シート状に取り出して培養したLewisラットの網膜色素細胞に小さな傷を多数つけた後、BSAの存在下で、マクロファージを播種して24時間培養し、その上澄みと共に、網膜色素細胞自体も一緒に無処置Lewisラットに静注した。先の実験と同様に1週間後にこのマウスをBSAで感作、抗原特異的な遅延型過敏反応が抑制されているか否かを検討したが、前回同様に遅延型過敏反応の抑制は認められなかった。 以上の結果より、網膜色素細胞はACAIDの導入し得ないとの結論にいたった。臨床的に多くの臨床家が網膜色素細胞移植を施行しようと試みているが、網膜色素細胞移植時にACAIDが導入され拒絶反応が抑制される可能性は少ないものと考えられる。
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