1. 培養網膜神経細胞におけるグルタミン酸毒性に対するVIPの保護作用 初代網膜神経細胞培養を用いてグルタミン酸誘発遅発性神経細胞死に対するvasoactive intestinal peptide(VIP)の作用について検討した。VIPは10nM-1μMの範囲で用量依存性にグルタミン酸誘発遅発性神経細胞死を抑制した。この作用機構としてVIPレセプターを介する細胞内cAMPの増加がprotein kinase Aを活性化し、それがグルタミン酸誘発カルシウム流入過程以降に作用するためと考えられた。 2. グルタミン酸毒性に対するPACAPの保護作用 培養網膜神経細胞においてPACAP27およびPACAP38は10nM-1μMの範囲で用量依存性にグルタミン酸誘発遅発性神経細胞死を抑制した。PACAPのグルタミン酸毒性に対する保護作用として、protein kinase Aの活性化が重要で、その作用機構の一部にMAP kinase pathwayの関与が示唆された。 3. 磁気細胞分離システムを用いた網膜神経節細胞の分離・精製と培養 磁気分離システムを通す前の神経節細胞の割合が0.55%だったのに対して、使用後、神経節細胞の割合の平均は31.0%に上昇し、その神経節細胞を2週間以上培養条件下に維持することが出来た。fura-2を用いてカルシウム画像解析装置で細胞内カルシウム動態を検討したところ、培養神経節細胞にグルタミン酸レセプターが発現しているのが確認され、さらにホールセルパッチクランプ法を用いた電気生理学検討では、各種イオンチャンネル型グルタミン酸レセプターが発現しているのが認められた。ラット網膜神経節細胞の精製に磁気細胞分離システムは有用であり、これを用いた培養は、グルタミン酸誘発網膜神経節細胞死の実験モデルとなりうる。
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