(a)網膜移植に適した条件を決定するための研究:ラットを蛍光灯連続照射下に飼育することによって誘発された細胞分裂の盛んな細胞には、マクロファージが含まれることを、免疫組織化学的手法を用いて同定した。一方、網膜移植を成功させる目的のために、ラット生体に作用させるレクチンは、従来の植物性のものよりも、もともと網膜で産生しうるものの方が生理学的に適しているとの観点から、ラクトースカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、ウシ網膜からレクチンを精製した。分子量kDと35kDのレクチンが得られたが、生体に作用させるには、十分量を準備する必要があることから、次年度の研究として、cDNAのクローニングを計画した。本レクチンのcDNAをスクリーニングするための抗体を、家兎を用いて作成することに成功した。 (b)光受容体間基質のO-結合型複合糖質を介した接着機構に関する研究:MUC2は、網膜には分布しないことを、免疫組織化学的手法を用いて同定した。本研究結果から、MUC2はMUC1とは異なり、網膜視細胞層と色素上皮細胞の間の接着には関与しないことが判明した。一方、(a)で得られた抗体が、網膜外境界膜部に結合したことから、ミューラー細胞の突起と光受容体間基質の接着に、網膜レクチンも関与している可能性が示唆された。 (c)光受容体間基質のN-結合型複合糖質の光応答に関する研究:ラットを灌流固定する際に、paraformaldehyde単独の固定液を用いた場合光応答は発現しないのに対し、glutaraldehydeを含有する固定液を用いた場合光応答が発現することを、光顕的および電顕的に同定した。本研究結果から、網膜下腔内の光受容体間基質を架橋形成させて、強固に固定しないと、N-結合型複合糖質は容易に動いてしまうことが判明した。
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