(a) 網膜移植に適した条件を決定するための研究:網膜移植を成功させる目的のためには、従来の植物由来のレクチンよりも生体レクチンの方が適しているとの観点から、網膜レクチンを大量に精製することにした。平成9年度に作成したウシ網膜から精製した2種類のレクチンに対する抗体を用いて、ウシ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングした。抗体と反応する蛋白を発現するクローンのcDNAをクローニングし、その塩基配列をシーケンサーを用いて決定したところ、分子量15kDのレクチンは他臓器で既に報告のみられるガレクチンに一致したのに対し、35kDのレクチンは未知のものであることが判明した。後者は網膜に特異的なレクチンかも知れない。これによって、マルトース結合蛋白などとのフュージョン蛋白として大腸菌に合成させれば、網膜移植実験に必要な十分量の網膜レクチンを得ることが可能となった。 (b) 光受容体間基質のO-結合型複合糖質を介した接着機構に関する研究:網膜外境界膜部において、ミューラー細胞の突起と光受容体間基質との接着機構を解明するために、ウシ網膜光受容体間基質から、Jacalin-agaroseカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、O-結合型複合糖質を精製した。これに対するポリクローナル抗体を家兎を用いて作成し、ウシ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、抗体と反応する蛋白を発現するクローンのcDNAがクローニングされた。さらにこのコア蛋白とマルトース結合蛋白とのフュージョン蛋白を大腸菌に合成させることに成功した。この蛋白に対する抗体は、免疫組織化学的に確かに光受容体間基質と反応することを確認した。
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