研究概要 |
我々はすでに、アトピー性皮膚炎患者の眼表面上皮のバリアー機能が、季節性あるいは通年性のアレルギー性結膜炎と異なり、障害されていることを見いだしている(Yokoi K,et al.Br J Ophthalmol,1998)が、本年度は、主に、アトピー性皮膚炎患者の眼表面のバリアー機能の障害と、皮膚炎との関連について検討した。41名のアトピー性皮膚炎患者を対象として、角膜および結膜上皮のバリアー機能を測定し、アトピー性皮膚炎の皮疹面積と皮疹スコア(皮疹面積+皮疹要素:0〜6ポイントまで)との関係について検討した。さらに、末梢血中の好酸球数、血清総IgE値、血清LDH値、ダニ、スギ、カンジダの特異的IgE値とバリアー機能との関係についても調べた。その結果、皮疹面積とバリアー機能との関係において、角膜上皮では、有意な関連は見られなかったが、結膜上皮では、皮疹面積が重症のものでは、バリアー機能が低下していることが示された。また、皮疹スコアについても、同様に、角膜上皮と結膜上皮のバリアー機能と皮疹スコアの関係に解離が見られ、皮疹スコアの高いものでは結膜上皮のバリアー機能のみ低下していた。また、血清LDHと角膜、結膜のバリアー機能との間に有意な相関関係が認められ、さらに、血清総IgE値と結膜フルオレセイン取り込み濃度の間にも有意な相関関係が認められた。以上の結果から、アトピー性皮膚炎においては、全身の皮膚病変あるいはアレルギー性炎症が強くなるとと、結膜上皮のバリアー機能障害としてその影響がまず現れる可能性が示唆された。
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