研究概要 |
外側膝状体(以下LGN)は視覚の中継核であるが,最近の研究では皮質遠心路によって能動的な情報の選択にも関与しており,シナプス結合を含む解剖学的,生理学的機構を解明する目的で以下の3つの研究を行っている. 1.後頭葉病変後の長期経過例でLGNのシナプスを超える逆行性の視神経萎縮の有無を検討した.無赤色光眼底写真の解析,レーザー診断機器を用いた網膜神経線維層の厚みの解析はほぼ終了し,半盲側の神経線維の菲薄化を認めた.また電気生理学的にパターン反転刺激で誘発される網膜電図(以下PERG)で,健常視野側に比べ半盲視野側で反応の減弱がみられたが,正常対照群での反応の個人差が大きく,今後定量性,再現性を検討する. 2.外側シルビウス上領(LS領)はネコの視覚連合野の1つで視覚皮質やLGN,視床枕からの入力が収束する部位である.上丘深層は黒質を介して視覚性方向定位運動に深く関与しており,その主要な入力源はLS領であり,LS領から上丘に至る経路には直接経路と線条体を介する間接経路がある.本研究ではLS領から上丘,線条体尾状核に投射するニューロンを逆行性電気刺激で同定後受容野特性を比較した.その結果,両者は受容野の大きさ,方向選択性,至適視標速度等で異なる特性を有し,またこれらのニューロンの大部分は17野を介した入力ではなく,LGN,視床枕あるいは18・19野からの入力に依存していることも判明した. 3.今後の展開として,聴覚課題に注意を集中させながらPERG及び視覚誘発脳電位を同時記録し,異種感覚に選択的注意を向けた時に視覚系に抑制が起こるのかどうかを検討する.抑制の起こる部位が視覚皮質か,外側膝状体か,あるいは以前から示唆されている視神経遠心性線維を介した網膜レベルでの抑制が実際に存在するのかを,調節・瞳孔系,瞬目による視覚遮断の影響を考慮しながら解析する.
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