研究概要 |
1. 後頭葉病変例での外側膝状体のシナプスを超える逆行性の視神経萎縮の検討において,網膜神経節細胞の活動を反映するパターン網膜電図(以下PERG)を用いて検討した.本年度,記録電極にはmodified DTL線維電極を使用し,正常対照群での測定変動幅及び個体差の程度を評価した.半側視野刺激において刺激視野が中心窩3度以内を含まない場合,振幅が平均30%減少すること,耳側刺激と鼻側刺激で反応潜時・位相に若干の違いが存在することが判明した.更に刺激の至適空間周波数には個人差が存在することが判明し,瞳孔径,調節,固視微動の影響や屈折矯正による刺激パターンの網膜投影像の大きさの違いを今後検討する必要がある.また既に網膜神経線維層の厚みの分析は終了しているが,レーザー走査型検眼鏡を新たに用いて半盲の症例での視神経乳頭辺縁(rim)の面積を定量する予定である. 2. 聴覚課題に注意を集中させながらPERG及び視覚誘発脳電位を同時記録し,異種感覚に選択的注意を向けた際の視覚系への影響を正常被検者で検討した.音階作成ソフトを用いて,よく知られた童謡等の周知のメロディーの中にランダムに誤音の挿入したものを作成し,被検者にパターン反転刺激を固視させながら聴覚課題を負荷した.被検者の誤音認知の正確性から聴覚注意度を評価した.聴覚注意度の高かった8名の被検者でPERGの振幅に20〜30%の低下がみられ,視神経に含まれる遠心性線維を介した網膜レベルでの抑制機構の存在が示唆された.今後,聴性誘発電位の混入の有無や,瞬目に伴う視覚遮断や電位変動の影響及び時間・空間周波数の違いによる反応の変化を検討する予定である.
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