研究概要 |
1.後頭葉病変例での外側膝状体のシナプスを超える逆行性の視神経萎縮の検討において,走査型レーザー検眼鏡とレーザードップラー流量計を用いて後天性半盲症例での視神経乳頭の血流量の分析を現在進めている.しかしながら,辺縁や陥凹及び起伏等の乳頭形状にはかなりの個人差が存在し,定量的に差異を見いだせるかはまだ未定である.網膜神経節細胞の活動を反映するパターン網膜電図(以下PERG)を用いての検討では,本年度も記録電極にはmodified DTL線維電極を使用し,正常対照群での測定変動幅及び個体差を再評価した.瞳孔径,調節微動の影響は散瞳下・人工瞳孔の使用により無視できることが判明し,測定変動幅を最小限にすることが可能となった. 2.視神経に含まれる中枢からの遠心性線維を介した網膜レベルでの抑制機構の研究において,一昨年より異種感覚である聴覚に選択的注意を向けた際の視覚系への影響をPERG,VECPを用いて検討している.聴覚刺激に関して,音圧レベルが高い場合,聴性誘発脳波の混入することが判明し,また選択的注意を促す点からも闘値近傍の低音圧刺激を用いて今後再検討する.また瞬目に伴う視覚遮断の影響はEOGモニターをトリガーにしアーチファクトリジェクターを連動させることで解決できることを明らかにした.更に現在,一眼の杆体順応が他眼の錐体機能に影響を及ぼす現象,すなわち,持続性両眼間抑制(tonic interocular suppression)に関しても,遠心性線維の関与を電気生理学的に検討中である.この研究は両眼の順応状態が異なる非生理的条件下において,両眼の順応状態の調整機構が従来言われている視覚皮質レベル以前に,網膜レベルで存在するのかを検討するものであり,PERGでの振幅変化が確認できれば,遠心性線維による抑制機能を間接的ではあるが,明らかにすることが可能である.
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