研究概要 |
家兎角膜を摘出し,角膜実質コラーゲンをコラゲナーゼで溶解し,得られた実質細胞を継代培養した.角膜実質細胞をコラーゲンゲル内に包理し,ヒト血小板由来のSPARCを添加して培養し,実質細胞によるコラーゲンゲル収縮を計測した.その結果,角膜実質細胞によるコラーゲン収縮は,添加したSPARCの濃度に依存して促進することが認められた.また,プラスチック培養皿上に培養した角膜実質細胞の培養液中にSPARCを添加すると,細胞の収縮が生じ,細胞がプラスチック皿上から遊離することを観察した.倍溶液からSPARCを除去すること細胞は再接着することから,SPARCによるこの細胞の遊離作用は可逆的であることが明らかとなった. このような実質細胞によるコラーゲンゲル収縮作用や実質細胞自身の収縮に,細胞内骨格の1つであるαーsmooth muscle actin(αSMA)が関与しているのではないかという仮説の元に,角膜実質細胞のαSMA発現に対するSPARCの影響について免疫組織学的に検討した.SPARC無添加で培養した場合,約10%前後の細胞にαSMAの発現が認められた.一方,SPARC(10μg/ml)を添加して培養すると,約20-25%の細胞がαSMAを発現していることを認めた.さらにαSMA発現量をWestern Blot方を用いて検討すると,SPARC添加培養によって細胞数100,000個当たりのαSMA発現量は増加していることが認められた.現在,CompetitiveRT-PCR法を用いて,mRNAレベルでのαSMA発現にSPARCが影響しているかについて検討中である. 角膜創傷治癒過程におけるSPARCの役割については,家兎角膜に切開創を加えて経時的にSPARCの局在について免疫組織学的に検討している.正常家兎角膜ではSPARCは内皮細胞層にのみ認められた.一方,創傷角膜では損傷直後から損傷部の上皮細胞や角膜実質部に出現することが観察された.
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